黒檀色から鉄錆色へ
時とともに味わいを増す伊達冠石
地球の営みが眼前に広がる
大蔵山の採石場
伊達冠石の採石場は、大蔵山の尾根沿いの敷地、約50haの広さがございます。鉄分を多く含んだ赤土に覆われた大地の約10m掘り下げたところにある伊達冠石の岩盤は、約2000万年前に活発に起こった火山活動によって、形成されたと考えられています。長い長い地球の歴史の中、マグマの冷え固まり方や海進の影響などで、丸玉石、柱状、そして鋭角的なカーブの彫刻的な形状など、実にさまざまな形の石がとれます。このように貴重な伊達冠石の味わいある形を生かせるよう、重機の作業をする際も細心の注意を払っております。
時が染める色あい
本磨きの艶やかな鏡面のような美しさ。水磨きのマットで奥深い表情は、伊達冠石の醍醐味ですが、この黒檀色の面は、年々味わい深い鉄錆色へと変化していきます。これは石に多く含まれる鉄分が、空気や水分に触れて徐々に酸化することによって起こる経年変化なのです。また、長い年月を経ても水分への耐性は変わらず、艶落ちもしません。モニュメントや石塔、墓石として伊達冠石が評価される特徴のひとつです。
石目模様
弊社工場では切削面を技術スタッフが何度も研磨して仕上げております。この研磨によって、石目模様が次第に浮かび上がってきます。例えば広葉樹のメープルやトチでは「バーズアイ」と呼ばれる木目が珍重されるように、伊達冠石も石目があり、ひとつひとつ個性があります。かつては石目を「小目」「トラ目」「小トラ」などと呼んで希少性を強調していましたが、現在は、自然石全体の形状や皮の表情のバランスを重視し、石目模様は、一期一会の表情を愛でるものとしてお客様にご案内しております。
*写真はすべて本磨き。
磨き方について
本磨き
切削面を鏡のように艶やかに磨く仕上げを「本磨き」といいます。研磨盤の粒子を、粗い番手から徐々に細かいものに合計8回変えながら、鏡面のように艶やかに仕上げます。ひとつ一つの工程ごとに石材の表面の状態を確かめる加工は、非常に集中力を要します。
石肌残し
豊かな表情を見せる「石肌」と、内部の黒檀色のコントラストは、伊達冠石の大きな特徴です。この特徴を生かすため、石肌をすべて取り除いて磨くのではなく、一部意匠的に残すこともあります。石肌のどの部分を残すかという技術とセンスがともに問われる加工方法なのです。
水磨き
本磨きに対し、「水磨き」は硯のようにマットで重厚な質感をつくる仕上げです。工程は本磨きのように、研磨盤でほぼ同様の工程を重ねます。伊達冠石の石肌と相性が良く、写真のように左半分をそのまま磨き残し(磨き残し参照)、右側だけ水磨きする仕上げは、大蔵山の石塔のひとつ、「玄」シリーズで採用されています。
のみ切り
「のみ切り」とは先端の尖った鉄製のノミと、セットウと呼ばれる金槌を用いて、石の表面を叩いて荒く仕上げる加工方法です。磨いた面にあえて鑿跡を残して石工の気概を表すなど、意匠として用いる場合もあります。